my favorite ___ 06 : Riko Kinoshita
2024. june
artwork: eiko sasaki
木下理子さんの愛用品:
ガラスの指輪​​​​​​​
いつからか、右手の人差し指に指輪がないと落ち着かない。お気に入りのものがいくつかあり、気分で着け替える。大きな天然石がはまっているもの。プラスチック製のマーブル模様のもの。それから、ガラスの指輪が色違いで2つ。つるりとした丸いモチーフが付いている。舐めかけのハッカ飴みたいな薄水色と、ビールを結晶にしたみたいな黄色。考え事をするとき、ドキドキするとき、このつるつるとした表面を撫でると安心する。私はちょっとしたことでやたらに緊張してしまうので、このひんやりと冷たい指輪が、冷静さを取り戻すための御守りのような存在になっている。
20歳を迎えた頃、「もう大人だからおもちゃのアクセサリーは卒業だね」と言われた。あれから10年が経つけれど、私はいまだにチープな可愛さにときめき、部屋をガラクタだらけにし、外では、緊張からくる手の震えを、指輪に触れて誤魔化している。
いつ大人になるのだろうか。まだ外したくないと思ってしまう。
木下 理子|Riko Kinoshita
美術作家。1994年生まれ。武蔵野美術大学大学院修士課程油絵コース修了。ドローイング、立体作品、あるいはインスタレーションのような空間的な手法で、未知の景色や捉えきれない対象を引き寄せるアプローチとしての作品群を展開している。
近年の展示に、「TYPO/PLATE」東塔堂 (2024)、「幽かなスリル」もりやまていあいとう/えいとう〈森山邸〉 (2024)、「VOCA展」上野の森美術館 (2024) など。
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