my favorite ___ 04 : Yu Yokoyama
2024. Apr
artwork: eiko sasaki
横山雄さんの愛用品:
カブトチェア
ものをつくっているなら自分とは違う分野のものづくりへも理解や尊敬を示したかったが、二十代の自分にはお金が無かったので恥ずかしくもネットオークションで買った、それでも我が家でデザイナーが分かる一番最初の家具が、剣持勇によってデザインされた天童木工のカブトチェアだった。絵を描くときも、デザインをするときも、メールを返すときも、本を読んだり食事をしているときでさえも、私はほとんど椅子に座って過ごしているので、生活のなかでもっとも長い時間「デザイナーの家具を買ったぞ」という達成感を感じることができる。アームレストの代わりにもなる背もたれの曲線や足を置いておいてもどっしりと支えてくれる大味なキャスターは六〇〜七〇年代のモダンなムードがあって、まるで座っているだけで仕事が出来るようになるかのような佇まいだ。

毎日使い倒しすぎて合皮がヨレて裂けてしまったので修理の金額を調べると、この複雑な形の張り替えはたいへん難しいらしくネットオークションで買った倍以上するようだった。しかたなくクッションを上に置いて使うことになり、すこしほっこりした見た目になってしまった。いつかもっと生活がちゃんとしてきたら、張り替えてまた格好良く使ってあげたい。
横山雄|Yu Yokoyama
画家、デザイナー。桑沢デザイン研究所総合デザイン科卒業。第83回毎日広告デザイン賞最高賞受賞。全国各地での展覧会ほか、沢木耕太郎『旅のつばくろ』、村上春樹×柴田元幸『本当の翻訳の話をしよう 増補版』の装画、世田谷美術館「マルク・シャガール 版にしるした光の詩」のアートディレクション、デザインなどを手掛ける。 
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