my favorite ___ 02 : Motoyuki Shibata
2024. Feb
柴田元幸さんの愛用品:
インク壜(セーラー、プラチナ)
翻訳には太字の万年筆を使うので、インクがすぐなくなる。仕事がはかどるとカートリッジなら一日でなくなる。なので、なるべく吸入式の万年筆(またはコンバーター)+インク壜を使うようにしている。壜だと(何種かを併用するので)数か月は持つから、使い終わったときはけっこう達成感がある。そのころにはもう壜というモノに対する愛着も湧いている。インク壜のデザインってどこもけっこういいのだ。なので、空になってもすぐには捨てられない。机の隅っこに無駄に置いてある。しかしそんなことをやってると部屋はいつまでも片付かない!と、ときどき思い立って、捨てる。実はもっと先に捨てるべきモノはほかにいくらでもあるだろうに……壜に申し訳ない。
いま一番使っているインクは、セーラーの顔料「青墨」と、プラチナの顔料ブルーと、プラチナの顔料赤。「赤」という商品は実は存在しない。「プランセピア」と「ローズレッド」を半分ずつ混ぜると、きれいな赤になるのだ。
柴田元幸|Motoyuki Shibata
翻訳家。現代アメリカ文学を中心に訳書多数。オースター『幽霊たち』、ミルハウザー『イン・ザ・ペニー・アーケード』、ダイベック『シカゴ育ち』、ブラウン『体の贈り物』、マコーマック『雲』、サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』など。著書に『アメリカ文学のレッスン』『つまみ食い文学食堂』『ケンブリッジ・サーカス』など。文芸誌『MONKEY』責任編集。